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主格保持の原則

柴谷 (1978) の主格保持の原則とは日本語にはすくなくとも1の名詞句は「が」格でなくてはいけないという原則である。主格保持の主格とは「が」格のことである。
(1)
a. 池が青い。
b. *池に青い。
(1b) が非文なのは主格保持の原則に合っていないからである。形容詞の「危なげない」はこれと同じく「危なげがない」と中間に「が」が入る言い方もある。
(2)
a. 太郎の経営が危なげない(こと)。
b. 太郎の経営が危なげがない(こと)。
(2a) でも (2b) でも同じような意味である。しかし「太郎の経営」に与格の「に」格にすると
(3)
a. *太郎の経営に危なげない。
b. 太郎の経営に危なげがない。
(3a) が非文になるのは主格保持の原則に合っていないからである。一方、 (3b) が正文であるのは「危なげがない」が1語というよりはまるで文のような働きをしているように感じて「危なげがない」の「が」がまるで主格のように感じられるからである。しかし「危なげがない」は文ではなく、1つの語である。但し、限りなく文に近い語なのである。しかし
(4)
a. 太郎の話がたわいない。
b. 太郎の話がたわいがない。
「たわいない」や「たわいがない」は「危なげない」や「危なげがない」と似ているが、「たわいがない」はどうも文のような感じはしない。だから
(5)
a. *太郎の話しにたわいない。
b. *太郎の話しにたわいがない。
「たわいがない」は1語とみなされ (5b) のように非文となる。「危なげがない」や「たわいがない」は「が」が中間に入っているが片方は文の雰囲気を保った形容詞で他方はほぼ語に近い形容詞となっているみたいである。

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by miyakmae | 2021-06-20 03:55 | 言語 | Comments(0)

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