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壁塗り動詞の曖昧性

「ゴミ箱がいっぱいだ」は曖昧である。

(1)
a. ゴミ箱がいっぱいだ。
(1a) は曖昧である。
(2)
a. ゴミ箱が(ゴミで)いっぱいだ。
b. (部屋に)ゴミ箱がいっぱいだ。
(1a) は (2a) のように「ゴミ箱」が場所を表す場合や (2b) のように「ゴミ箱」が対象物を表すように解釈ができる。場所としてとらえるか主題としてとらえるかで意味の曖昧性が生じるのである。これは「いっぱいだ」のような述語がいわゆる壁塗り動詞であり、主題と場所の交替が可能なタイプの動詞の特徴である。
(3)
a. ( 壁に)ペンキを塗った。
b. (ペンキで)壁を塗った。
(3) の「塗る」は場所と主題を必要とする述語である。このようなタイプの述語は (3a) と (3b) のように交替して部分解釈と全体解釈の2つのタイプの解釈が可能となる。 (3a) が部分解釈で (3b)が全体解釈である。部分解釈の場合、一般に「場所」は省略可能となり、一方、全体解釈の場合は移動の対象物である「道具」が省略可能となる。しかし対象物が容器を表すような (1a) の例では「ゴミ箱」が対象物であると解釈されたり場所であると解釈されて曖昧性が生じることになる。
壁塗り動詞の曖昧性_b0356108_07254868.jpg

by miyakmae | 2021-06-14 06:16 | 言語 | Comments(0)

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