人気ブログランキング | 話題のタグを見る

知覚動詞と使役動詞

知覚動詞と使役動詞の中には同じ統語構造をとるものがある。

(1)
a. John saw Tom run to the station.
b. John made Tom run to the station.

(1a) が知覚動詞で (1b) が使役動詞である。両方とも目的語と裸不定詞節をとる。英語では全く同じ構造なのであるが日本語を知っている人たちにとっては全く異なった構造になっていると考える。(1) の日本語は構造が異なるのである。

(2)
a. ジョンはトムが駅まで走るのを見た。
b. ジョンはトムに駅まで走らせた。

英語では目的格の Tom も日本語では (2a) では主格の「トムが」になり、 (2b) では与格の「トムに」になっている。また主節の動詞と裸不定詞節の関係も異なってくる。 (1) の文を忠実に日本語に変えるなら次のようになる。

(3)
a. *ジョンはトムを駅まで走り見た。
b. *ジョンはトムを駅まで走りさせた。

しかし英語でも表層上は同じに見えても深層では異なった構造になっているのがわかる。

(4)
a. John saw Tom run to the station but Mary didn't see it.
b. *John made Tom run to the station but Mary didn't make it.

(1a) と (1b) は表層では同じ統語構造のように見えるが、深層では構造が異なっているのがわかる。知覚動詞の場合は動詞の補部を it で置き換えることができるが、使役動詞で同じことをすると非文となるのである。つまり知覚動詞の補部は事象として捉えているのであるが、使役動詞の場合は事象ではなく事象の一部であると考えられる。というのも使役動詞の場合は

(5)
a. John made Tom run to the station but Mary didn't make it happen.

(5a) のようにいわなければ文法的にならないのである。つまり (1) の文は表層上は同じような構造をしているように見えるが、日本語と同じく深層では異なった構造を英語でもしているということなのである。


知覚動詞と使役動詞_b0356108_07371669.jpg


by miyakmae | 2020-03-07 06:25 | 言語 | Comments(0)

言語学と猫のブログ    HP「英語と日本語の窓」は    http://miyak.web.fc2.com


by miyakmae