人気ブログランキング | 話題のタグを見る

かけの

half-done という意味の「かけ」はそのあとに名詞句がくる場合、一般にもとの文の目的語をとる。

(1)
a. 少年が本を読む。
b. 読みかけの本
c. *読みかけの少年

(1b) のようにもとの文の目的語の場合は問題ないが (1c) のように主語をもってくると非文となる。これらから Kishimoto (1996) は「かけの+名詞句」の名詞句には direct object constraint があるとする。これから非対格自動詞はもともと直接目的語の位置にあったものが主語の位置に移動したのでこの direct object constraint が適応されないと予想される。

(2)
a. 太陽が沈む。
b. 沈みかけの太陽

予想のように (2a) の太陽を「かけの+名詞句」の主要部名詞の位置に置くことが可能である。このように一見して direct object constraint があるように見えるが、もともとの主語もこの構文をとることができる。

(3)
a. 分厚い本を読みかけの少年

(1c) はアウトであるが (3a) のように元の目的語を入れてあげれば主要部名詞に主語を持ってくることもできる。また非能格自動詞の主語はもともと主語の位置に基底からあった純粋な主語であるが、このような目的語でない主語でもこの構文をとることができる。

(4)
a. 少年が走る。
b. 走りかけの少年

(4b) は問題ない。とすると Kishimoto (1996) の direct object constraint は例外がでてくることになる。これらをもとに Kishimoto は統語的制約ではなく意味的制約を追加することになる。たしかに (1b) の「かけの」と (4b) の「かけの」では意味がことなる。前者は half-done であるが後者は be about to となる。


かけの_b0356108_06324688.jpg

by miyakmae | 2019-10-10 05:49 | 言語 | Comments(0)

言語学と猫のブログ    HP「英語と日本語の窓」は    http://miyak.web.fc2.com


by miyakmae