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cynosure 「注目の的」とはもともとは dog's tail という意味でした。ここの dog は実際は犬ではなく小熊のことで、もともと Ursa Minor 「こぐま座」のことを指して、その tail 「しっぽ」のところにあるのが the polestar 「北極星」つまり Polaris のことです。そう North Star 「北極星」で、北極星は船乗りたちの注目の的で、これを印に船乗りたちは自分のいる方角を理解したのでした。だから cynosure 「注目の的」というのは Polaris「北極星」のことで、それを「犬のしっぽ」と名付けたのでした。ただ Canis Minor 「小犬座」は別にあるのでなぜ cyno- 「犬」が ursa 「小熊」を表すようになったかは不明です。 Canis Minor のしっぽにあたる星はSirius 「シリウス」つまり天狼星です。犬を表す cyno はゲルマン語系では k となり kennel 「犬小屋」と同根です。犬の形容詞は canine 「犬の」となり canine tooth で「犬歯」となります。cynegetics で「狩猟」となります。昔から hunting は「犬」を使って game を追い詰めたのでそのような意味になりました。精神病で cynanthropy 「犬身妄想」というのがあります。犬になりたいとか犬だと思っていることです。 cynanthropy の後半部分は anthropology 「人類学」の「人」を意味する語です。次に cyno- 「犬」と cephalus 「頭」をつなげると cynocephalus 「ヒヒ」ができます。 cynocephalus とは犬のような頭をもった動物という意味で、伝説上は「犬頭人」のことをも表します。アフリカ大陸の北西沖にカナリア諸島があります。当然、カナリア諸島は canary 「カナリア」で有名なのですが、実は canary 「カナリア」は鳥ではなく「犬」という意味だったのです。ローマ時代、ジュバ二世がこの島を訪れた時に多くの犬を見つけました。その記録をのちに Pliny が博物誌に the islands of dogs と記入して、カナリア諸島は「犬の島」ということになったのです。しかしのちの人々がこの島を訪れた時に canary がたくさん飛んでいるのを見つけ canary 「カナリア」と名付けました。だから canary 「カナリア」のもとの意味は canine と同じく「犬」という意味だったのです。次に古代ギリシャの哲学者Diogenes 「ディオゲネス」はありとあらゆる社会的風習や通念を軽蔑して野良犬のような極貧の生活に甘んじた。彼らの考えを kynikos 「キュニコス」 dog-like と呼び、そのような考え方を cynicism 「犬儒哲学」とか「キニク主義」という。これより cynicism が「冷笑」とか「冷笑主義」になったのである。もともとの意味は dog-like という意味である。生地にパイル生地というのがあるが英語では chenille 「シュニール糸」からできた生地という。 chenille とはもともとは「小さな犬」という意味である。前半部分の cheni canine と同じ「犬」で、後半部分が小さいを意味する小辞詞である。この「小さな犬」がフランス語では「毛むくじゃらの毛虫」となり、「シュニール糸」に変わった。だから chenille は語源的には単に little dog という意味なのである。


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by miyakmae | 2019-06-06 16:46 | 言語 | Comments(0)

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