「たくさん」は数量副詞として解釈したり、数量詞が遊離したものとして解釈したりする。
(1)
a. たくさんの子供が庭で遊んでいた。
b. たくさんの子供が庭で遊んだ。
(1a) と (1b) の「たくさんの」はその後の名詞「子供」を修飾する数量詞である。この「たくさんの」を遊離すると
(2)
a. 子供が庭でたくさん遊んでいた。
b. 子供が庭でたくさん遊んだ。
(2a) の「たくさん」は (1a) の「たくさんの子供」のことであるが (2b) の「たくさん」は数量詞が遊離したというよりは後ろの「遊んだ」を修飾する数量副詞として解釈される。つまり「遊んでいる」と「遊ぶ」は質がことなる動詞となる。前者は「遊ぶ」と「いる」とが複合して「遊んでいる」という複合動詞が形成され、後者はそのような複合がないため意志をもった「動作主」を主語にとる述語と解釈される。一方、複合動詞の「遊んでいる」は「動作主」ではなく「主題」を主語にとる非対格動詞となるのである。