代名詞は英語と日本語では異なることに加えて、ややっこしいのが cataphora とか retroactive anophora とよばれる後方照応である。
(1)
a. After he cleaned his room, John studied hard.
b. After John cleaned his room, he studied hard.
両方とも he = John となるが変な感じがする。(1a) は基底に John studied hard after he cleaned his room. があり、 after 節が主語の前に移動してきたから、もともとは John が先に述べられ、その後に he が述べられているから cataphora ではなく anaphora で問題がないと考えると、 (1b) がうまくいかなくなる。 He studied hard after John cleaned his room. だと he ≠ John となってしまうからである。これが主語の前に移動したら John = he になると意味が変わってしまうからである。ま、両方とも代名詞は c 統御の範疇で束縛されていないからいいのではあるが解せない。
(2)
a. That he cleaned his room surprised John.
b. That John cleaned his room surprised him.
(2) も両方とも he = John であるが、しっくりいかない。束縛はどちらかというと再帰代名詞や相互代名詞の問題としていろいろと議論されてきた付録として人称代名詞が束縛原理 B となっているが、再帰代名詞に相互補完的なのが人称代名詞であるので単に自由であるというだけでなく、どのような時に同一指示なのか、もっと単純明快な理論が必要な気がする。同一指示などという概念はミニマリストプログラムでは破棄されているのだろうが。