格付与と意味役割付与を統一的にとらえることから主語も目的語ももともとは動詞句の内部で発生したと考えることが一般的となってきた。
(1)
a. 子供たちが勉強した。
b. 子供たちで勉強した。
(1a) の「子供たちが」も (1b) の「子供たちで」も主語であるとわかる。日本語の主語の特徴は尊敬語化が可能であるので、 (1) の文を少し変えて
(2)
a. 先生たちが刺身をお食べになった。
b. 先生たちで刺身をお食べになった。
c. *子供たちで先生をお褒めになった。
(2a) も (2b) も可能なので (1a) の「子供たちが」も「子供たちで」も主語であると言える。(2c) が非文なのは尊敬の対象の「先生」が主語にはなく、目的語であるからである。動詞句主語内在仮説は (1) の主語の格が異なるのは、片方が動詞句内の主語の位置にとどまり、片方が動詞句内の主語の位置から TP の SPECに移動していると考える。