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日本語の繰り上げ構文とコントロール構文

繰り上げ構文とコントロール構文は日本語では複合動詞の問題である。

(1)
a. 太郎が猫にカリカリをやりすぎた。
b. 太郎が猫にカリカリをやり忘れた。

(1) の文は両方とも形は似ているが、構造はずいぶんと異なる。「意図的に」を主節に入れると

(2)
a. *太郎は猫にカリカリを意図的にやりすぎた。
b. ?太郎は猫にカリカリを意図的にやり忘れた。

また補文に時制辞を入れて

(3)
a. *太郎が猫にカリカリをやることをすぎた。
b. 太郎が猫にカリカリをやることを忘れた。

それぞれ主節の述語である「すぎる」と「忘れる」の主語は前者は「太郎」ではないが後者は「太郎」であることがわかる。さらに「閑古鳥がなく」というイディオムでテストすると

(4)
a. 閑古鳥が鳴きすぎた。
b. 閑古鳥が鳴き忘れた。

(4a) はイディオム解釈が可能であるが、(4b) となると具体的な鳥が鳴くのを忘れたという文字通りの解釈になってしまう。このようなことから (1) は次のような構造になっていると考えられる。

(5)
a. [太郎が [TP t 猫にカリカリをやり]すぎた]
b. [太郎が [CP PRO 猫にカリカリをやり]忘れた]

日本語の繰り上げ構文とコントロール構文_b0356108_04161044.jpg


by miyakmae | 2017-12-01 17:48 | 言語 | Comments(0)

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