副助詞とか係助詞といわれている「とりたて詞」はなかなか変な振る舞いをする。
(1)
a. 太郎が本を買った。
b. 太郎も本を買った。
c. 太郎が本も買った。
とりたて詞は含意を表し、前提がある。 (1b) の前提は「誰かが本を買った」ということで、 (1c) の前提は「太郎はなにかを買った」ということである。これらのとりたてられた句はもともと項であるが、その項を表す格は削除されなくてはならない。ただし内格は格つきの場合も可能である。これらのとりたて詞は名詞句につく場合はその名詞句の後に置かれる。英語と逆である。
(2)
a. John bought a book.
b. Only John bought a book.
c. John bought only a book.
さらに英語では動詞句につける場合には意味が曖昧になる。また形態はかわらない。しかし日本語の場合は「とりたて詞」のみでなく、ダミーの do 挿入が必要になる。
(3)
a. *太郎が本を買っもた。
b. 太郎が本を買いもした。
しかも日本語の動詞句への「とりたて詞」には曖昧性がなくなる。一体、どうなっているのであろうか。多分「とりたて詞」の位置は多分、語順と関係しているのだと思う。 SVO 言語では前に、 SOV 言語では後ろにつくのであろう。しかし動詞句の取り扱いに関してはなぜ変化が生じるのかよくわからない。