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binary branching

最近の言語理論では語と語が binary branching で併合して大きな句を形成すると考える。この場合、主語が1つしかない自動詞文や主語と目的語がそれぞれ1つづつの他動詞文の場合は問題ないが、項が3つある3項述語の文の場合には問題が生じる。

(1)
a. Tom walked.
b. Tom walked his dog.
c. Tom rolled the ball down the hill.

(1) はそれぞれ

(2)
a. [[Tom][walked]]
b. [[Tom][[walked][his dog]]].
c. [[Tom][[[rolled][[the ball][down the hill]]]].

(2a) や (2b) は問題がないが (2c) では the ball と down the hill が併合して節みたいなものが形成されたものを rolled することになり変になる。それで現在の理論では (1c) の文を次のような文の構造をしていると分析する。

(3)
a. Tom made the ball roll down the hill.
b. Tom Φ the ball roll down the hill.
c. Tom Φ+rolled the ball [t] down the hill.

つまり実際には使役を表す音形のない軽い動詞が (3a) の made の位置にあって、その音形のない軽い動詞の位置に下の動詞の roll が移動してきて併合して (1c) の rolled になると分析する。するとThe ball roll down the hill. と Tom made it. みたいにすべてが2項述語にたいになりそれらが最後につなぎ合うので問題なく binary branching で表すことができるのである。日本語で考えれば当然のことなのである。というのも日本語では「ころがる」という自動詞と「ころがす」という他動詞の2種類があり、日本語では自動詞文と他動詞文とを形態上、はっきりと区別しているのである (3b) のΦの位置に日本語では使役の形態辞の「させ」を意味する「す」があると考えればいいのである。

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by miyakmae | 2017-06-05 15:56 | 言語 | Comments(0)

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