助動詞の根源的用法と認識的用法

助動詞の根源的用法と認識的用法の違いは、コントロール用法と繰り上げ用法の違いであると昔から分析されてきた(Ross (1969)).

(1)
a. John must examine his patient.
b. John's patient must be examined by him.

(1a) を根源的な意味での解釈をすると、その受動態は意味が異なる。 (1a) では義務があるのは John であるが、その受動文の (1b) では義務があるのは John's patient となって意味が異なってくる。一方、認識的用法の助動詞は (1) とは異なったふるまいをする。

(2)
a. John may visit his patient.
b. John's patient may be visited by him.

(2a) を認識的用法の「かもしれない」という意味に解釈すると、その受動態の文である (2b) も意味的には異ならない。というのも認識的用法の助動詞は命題に対する蓋然性を表しているので、能動態でも受動態でも命題は変わらないからである。このような根源的用法と認識的用法の違いは英語の to 不定詞のコントロール構文と繰り上げ構文と並行的なのである。

(3)
a. John seems to examine his patient.
b. John's patient seems to be examined by him.

(3a) は繰り上げ構文と呼ばれる to 不定詞の構文である。繰り上げ構文では能動態も受動態も論理的な意味はあまり変わらない。これはちょうど (2) の認識的用法の助動詞の場合と同じである。一方、

(4)
a. John tries to examine his patient.
b. John's patient tries to be examined by him.

(4) はコントロール構文と呼ばれる to 不定詞の構文である。努力するのは (4a) では John であり、 (4b) では John's patient なので論理的な意味が態を変えると変わってくる。これは助動詞の根源的用法の例と並行的である。

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by miyakmae | 2017-05-28 08:49 | 言語 | Comments(0)

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