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カートグラフィー

Chinque (1999)や Rizzi (1997) のイタリア言語学の人たちが推し進めたsplit CP analysis いわゆるカートグラフィープロジェクトによって、今までは一つの主語位置だったものをいろいろと分割することがはやっている。これが出てきたときにはあまりにも ad hoc であると思っていたが、結構、勢いを得て広く浸透している気もする。これは Takahashi (1996) の音形のない pro 分析とも似ている。 Takahashi (1996) は日本語の天気や気候を表す主語の前に、英語と同じような音形のない虚辞 pro が存在すると仮定した。

(1)
a. 太郎がリンゴを食べた。
b. 風が吹いた。

(1a) の「太郎が」と (1b) の「風が」は同じ主語のように見えるが、それぞれ違う位置にあるか、もしくはその前の空所が異なっていると仮定したのだ。 Takahashi (1996) は (1b) の前に音形のない pro が存在してそれがちょうど英語などの虚辞の it の役割をしていると考えた。一方、 (1a) の「太郎が」の前には何もなく自由に別の句が移動してくることができるスペースがあると考えた。その結果、つぎのような文法性の違いがでてくると分析したのである。

(2)
a. リンゴを食べさえ太郎がした。
b. *吹きさえ風がした。

(2a) が問題ないのは (1a) の「太郎が」の前が空所であいているのでそこに「リンゴを食べさえ」を移動することができるが、 (2b) がアウトになるのは (1b) の「風が」の前には音形のない pro が存在して「吹きさえ」がその位置に移動してくるのを阻止していると分析したのである。これは今流のカートグラフィーでの分析で行けば、 (1a) の「太郎が」の位置と (1b) の「風が」の位置が同じではなく、split CP か split TP のどこかの位置にあると分析するのと同じなのである。

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by miyakmae | 2017-05-13 21:25 | 言語 | Comments(0)

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