繰り上げ述語とコントロール述語

(1)
a. John seems to examine the spy.
b. John tries to examine the spy.

(1) は両方とも動詞の後に to 不定詞が来ているが当然、深層構造は異なることは明らかである。 (1a) の seem は繰り上げ述語と呼ばれる述語で表層の主語 John はもともとは to の前にあり繰り上げられたと考えられる。一方 (1b) の try はコントロール述語と呼ばれ主語の John はもともと表層の主語の位置にあると考えられる。 (1) の深層構造はそれぞれ次のようなものであると考えられている。

(2)
a. [ [seems [John to examine the spy]].
b. John tries [PRO[to examine the spy]]

(1a) は (2a) の後ろの命題の主語である John が主節の主語の位置に繰り上げられて realize するもので (1b) の主節の主語はもともとその位置にあり、この主語が後ろの音形のない代名詞 PRO をコントロールしていると考えられている。 (1) の to 不定詞以下は時制のない命題であるが詳しくみると (1b) の不定詞節は真偽が明確な命題とは言えないことがわかる。

(3)
a. John seems [to examine the spy], which is not true.
b. *John tries [to examine the spy], which is not true.

(3a) の関係詞 which が[ ] の命題を表し得るが (3b) の関係詞 which は [ ] の命題を表すことはできない。コントロール述語の to 不定詞節は真偽を表す命題ではなく、非現実を表す一種の法なのである。(1) は次のような意味を表しているのである。

(4)
a. It seems that John examines the spy.
b. John tries it. He should examine the spy.

(1a) の to 不定詞節は (4a) の that 節のように真偽が明確な命題であるが (1b) の to 不定詞節は (4b) の後の節のように仮定法的な法が入っている irrealis 「非現実」なのである。

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by miyakmae | 2016-05-26 07:27 | 言語 | Comments(0)

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