複合
2016年 05月 08日
(1)
a. look down
b. 見下す。
英語では look + down と動詞+副詞となるが日本語では「見る」+「下す」の動詞+動詞の複合になる。英語で複合の場合は日本語でも品詞の違いはあるが複合になるとわかっていたが、それが逆転する場合があるのでどうしてなのかいつも不思議に思っていた。
(3)
a. Tom showed Mary a picture.
b. Tom showed a picture to Mary.
(3) は次のような日本語と並行的であると思う。
(4)
a. トムはメアリーに写真を見せてあげた。
b. トムはメアリーに写真を見せた。
トムとメアリーの関係だけを見ると、(3a) の英語では T showed M と複合にはなっていないように見える。一方、 (3b) の英語は T showed to Mと動詞+前置詞の複合になっているのに、なぜ日本語では前置詞や副詞がついていない (3a) を「見せてあげた(見せてしまった)」のように複合にしてなぜ一見、前置詞がついて複合になっているような (3b) を「見せた」と複合ではない日本語にしなくてはいけないのか不思議に思ってきた。 (1) の例のように英語で複合の場合は日本語でも複合でなくてはいけない。それが (3) と (4) の場合はなぜ逆転するのであろうかと思っていたが、よく考えると (3a) が複合してい (3b) は複合していないのであると考えるようになった。
(5)
a. Tom showed a picture to Mary.
b. Tom [showed to Mary] a picture.
c. Tom [showed Mary] a picture.
(3a) はもともとは (5a) であったのがBaker (1988) がいうように編入がかかって (5c) のように組み込まれたのである。その際、英語では to がゼロとなって消えてしまったので一見、複合されていないように見えるが実際は show + to と複合が生じているのである。一方、 (3b) は複合が生じているのは生じているが動詞ではなく動詞句に複合が生じているだけで to Mary は全体として副詞句のようになっているだけで、動詞の showed に組み込まれてはいないと思うようになった。
(6)
a. Tom showed a picture to Mary.
b. Tom [showed a picture] [to Mary].
to Mary の前置詞 to は showed の中に組み込まれているのではなく動詞句 showed a picture の外側に付加詞としてぶら下がっているだけなので複合動詞化は起きていないのである。このように考えると、日本語でも英語でも複合の場合は両方とも複合であると統一的に説明ができる。