あげる


「あげる」はもともとは上下移動を表す動詞であったものが、比ゆ的に上位の人へものを移動する「授与」動詞に発展したり、ほかの動詞とつながり「受益」を表す複合動詞を形成したりするようになった。

(1)
a. 太郎が棚に食器を上げた。
b. 太郎が子供に食器を上げた。
c. 太郎が子供に食器を作ってあげた。

(1a) が「移動動詞」で (1b) が「授与動詞」で (1c) が「受益動詞」といえる。すべて「 AがBにCをあげた」と3項述語のように見えるが、テストをしてみると (1a) の「棚に」は項というよりは付加詞であることがわかる。

(2)
a. 太郎が3つの棚に食器を上げた。
b. 太郎が3人の子供に食器を上げた。
c. 太郎が3人の子供に食器を作ってあげた。

(2) の数量詞を遊離させると次のようになる。

(3)
a. *太郎が棚に3つ食器を上げた。
b. 太郎が子供に3人食器を上げた。
c. 太郎が子供に3人食器を作って上げた。

(3a) の「3つ」は「棚」を修飾するというよりは「食器」を修飾するようになり数量詞遊離は不可能のように思われる。また分裂文で強調すると次のようになる。

(4)
a. *太郎が食器を上げたのは棚だ。
b. 太郎が食器を上げたのは子供だ。
c. 太郎が食器を作って上げたのは子供だ。

(4a) は「棚だ」では非文になるが (4b) や (4c) では助詞を取った方が文法的となる。これらから (1c) の「子供に」は (1b) の「子供に」と同じく項を形成して (1a) の後置詞のついた付加詞とは異なることがわかる。ということは受益動詞は「作る」と「あげる」が複文構造をしているというよりは (1b) の「授与動詞」と同じく単文構造をしているように思える。

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by miyakmae | 2017-01-17 17:13 | 言語

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