<   2016年 05月 ( 10 )   > この月の画像一覧

繰り上げ述語とコントロール述語

(1)
a. John seems to examine the spy.
b. John tries to examine the spy.

(1) は両方とも動詞の後に to 不定詞が来ているが当然、深層構造は異なることは明らかである。 (1a) の seem は繰り上げ述語と呼ばれる述語で表層の主語 John はもともとは to の前にあり繰り上げられたと考えられる。一方 (1b) の try はコントロール述語と呼ばれ主語の John はもともと表層の主語の位置にあると考えられる。 (1) の深層構造はそれぞれ次のようなものであると考えられている。

(2)
a. [ [seems [John to examine the spy]].
b. John tries [PRO[to examine the spy]]

(1a) は (2a) の後ろの命題の主語である John が主節の主語の位置に繰り上げられて realize するもので (1b) の主節の主語はもともとその位置にあり、この主語が後ろの音形のない代名詞 PRO をコントロールしていると考えられている。 (1) の to 不定詞以下は時制のない命題であるが詳しくみると (1b) の不定詞節は真偽が明確な命題とは言えないことがわかる。

(3)
a. John seems [to examine the spy], which is not true.
b. *John tries [to examine the spy], which is not true.

(3a) の関係詞 which が[ ] の命題を表し得るが (3b) の関係詞 which は [ ] の命題を表すことはできない。コントロール述語の to 不定詞節は真偽を表す命題ではなく、非現実を表す一種の法なのである。(1) は次のような意味を表しているのである。

(4)
a. It seems that John examines the spy.
b. John tries it. He should examine the spy.

(1a) の to 不定詞節は (4a) の that 節のように真偽が明確な命題であるが (1b) の to 不定詞節は (4b) の後の節のように仮定法的な法が入っている irrealis 「非現実」なのである。

[PR]
by miyakmae | 2016-05-26 07:27 | 言語 | Comments(0)

庭の花

b0356108_10442544.jpg

[PR]
by miyakmae | 2016-05-17 10:44 | 写真 | Comments(0)

複合

普通、英語で2語が複合すると、日本語でも2語で複合するものと並行的である。ただし動詞の場合は英語では日本語のように動詞+動詞の複合ではなく、動詞+副詞の複合と一致する。

(1)
a. look down
b. 見下す。

英語では look + down と動詞+副詞となるが日本語では「見る」+「下す」の動詞+動詞の複合になる。英語で複合の場合は日本語でも品詞の違いはあるが複合になるとわかっていたが、それが逆転する場合があるのでどうしてなのかいつも不思議に思っていた。

(3)
a. Tom showed Mary a picture.
b. Tom showed a picture to Mary.

(3) は次のような日本語と並行的であると思う。

(4)
a. トムはメアリーに写真を見せてあげた。
b. トムはメアリーに写真を見せた。

トムとメアリーの関係だけを見ると、(3a) の英語では T showed M と複合にはなっていないように見える。一方、 (3b) の英語は T showed to Mと動詞+前置詞の複合になっているのに、なぜ日本語では前置詞や副詞がついていない (3a) を「見せてあげた(見せてしまった)」のように複合にしてなぜ一見、前置詞がついて複合になっているような (3b) を「見せた」と複合ではない日本語にしなくてはいけないのか不思議に思ってきた。 (1) の例のように英語で複合の場合は日本語でも複合でなくてはいけない。それが (3) と (4) の場合はなぜ逆転するのであろうかと思っていたが、よく考えると (3a) が複合してい (3b) は複合していないのであると考えるようになった。

(5)
a. Tom showed a picture to Mary.
b. Tom [showed to Mary] a picture.
c. Tom [showed Mary] a picture.

(3a) はもともとは (5a) であったのがBaker (1988) がいうように編入がかかって (5c) のように組み込まれたのである。その際、英語では to がゼロとなって消えてしまったので一見、複合されていないように見えるが実際は show + to と複合が生じているのである。一方、 (3b) は複合が生じているのは生じているが動詞ではなく動詞句に複合が生じているだけで to Mary は全体として副詞句のようになっているだけで、動詞の showed に組み込まれてはいないと思うようになった。

(6)
a. Tom showed a picture to Mary.
b. Tom [showed a picture] [to Mary].

to Mary の前置詞 to は showed の中に組み込まれているのではなく動詞句 showed a picture の外側に付加詞としてぶら下がっているだけなので複合動詞化は起きていないのである。このように考えると、日本語でも英語でも複合の場合は両方とも複合であると統一的に説明ができる。

[PR]
by miyakmae | 2016-05-08 09:02 | 言語 | Comments(0)

反意語

good の反意語は bad で open の反意語は shut です。2つとも antonymy の関係にあるのですが中身をみると微妙に異なっています。
(1)
a. ??The window is neither open nor shut.
b. This car is neither good nor bad.
(1a) はちょっと変です。窓が開いていないなら閉まっているはずですが、どちらでもないということは普通はありません。しかし (1b) は問題ありません。車は良くもなく悪くもない普通のものであることが可能だからです。 (1a) のような反意語の関係を complementary antonymy といい、 (1b) のような反意語の関係を gradable antonymy といいます。他にもいろいろな反意語の関係があります。
(2)
a. The fire resulted from his carelessness.
b. His carelessness resulted in the fire.
(2) の result from と result in は反意語の関係にありますが、これは (1) のような関係とはことなります。 (2) の反意語の関係は conversive antonymy で conversive な反意語はある軸に沿って方向性が逆になっているものです。ただ conversive な反意語は2つの要素の関係が逆転する場合で、1つの項の directionality が逆転する reversive antonymy とは若干異なります。
(3)
a. The elevator is going up.
b. The elevator is going down.
(3) も反意語の関係ですが主題の the elevator 1つしか項がありませんから (2) のような相関的な関係は築くことができません。

[PR]
by miyakmae | 2016-05-08 09:01 | 言語 | Comments(0)

道具格と用具格

Instrument と Implement
(1)
a. John cut the bread with a knife.
b. John ate the cereal with a spoon.
(1)の文は形も似ていて同じような構造をしているように見えますが、斜格交替ができるかどうかを調べてみると、明らかに異なった構造をしていることがわかります。斜格の with a knife や with a spoon を主語の位置に移動させると次の結果が得られます。
(2)
a. The knife cut the bread.
b. *The spoon ate the cereal.
(1a) の交替は許されますが、 (1b) の交替は非文となります(但し(1b) の意味ではなく擬人化されたスプーンが生き物のように食べた場合は文法的であるが)。(1a) の完成動詞に前置詞の with が使われると、INSTRUMENTを表し、 (1b) の活動動詞に前置詞の with が使われると IMPLEMENTを表します。INSTRUMENT と IMPLEMENT の違いは前者が実際のACTOR もしくは EFFECTOR とリンクするのに対して後者はそのようなリンクが成り立たないので斜格交替をかけると (2b) のように非文になってしまいます。これをもっと正確に表現すると次のようになります。
(3)
a. [do' (John, [use' (John, knife)])] CAUSE[[do' (knife, [cut' (knife,bread)])] CAUSE[BECOME cut' (bread)]]
b. do' (John, [eat' (John, cereal) ∧use' (John, spoon)])

[PR]
by miyakmae | 2016-05-08 09:00 | 言語 | Comments(0)

格助詞「を」

日本語の格助詞「を」はいろいろな意味役割を表す。
(1)
a. 臼を挽く
b. コーヒー豆を挽く
c. 粉を挽く
英語では
(2)
a. grind with a hand mill
b. grind coffee beans
c. grind them into flour
(1a) の「を」は明らかに「道具」であり、(1b) の「を」は「主題」であり、(1c) の「を」は「結果」である。

[PR]
by miyakmae | 2016-05-08 08:57 | 言語 | Comments(0)

mirativity


mirativity とは発話者が驚いたり、予期しなかったりしたことが生じた時に動詞にテンスやムードで表すことをいう。日本語やチベット語など東洋の言語の中には
(1)
a. 明日試験があるんだった。
b. 明日試験がある。
(1b) のことを過去形で (1a) のように言うことがある。これは (1b) の事実を述べるだけでなく、その事象を発話者は完全に忘れていて突然思い出したときに (1a) のように過去形で表すことである。これは英語の仮定法過去の時と同じような表現の仕方である。
(2)
a. If I had an exam tomorrow, I couldn't sleep tonight.
b. 明日試験があったら、今晩は眠れないのに。
英語でも仮定法のような特殊なもの以外にも日本語と同じように、時間は現在を表しているのに過去形で表して mirativity を表すような表現もかなりある。
(3)
a. You made it. You are here on time.
b. やったね、時間通りここにこれたね。
(3a) の You made it. は本当は現在形の You have made it. なのであるが単純に過去形で You made it. と mirativity を表している。

[PR]
by miyakmae | 2016-05-08 08:56 | 言語

日本語の基数詞

倍数の法則2

日本語の基数は倍数の法則(窪園2011)によって作られているというのを考えた。

(1)
a. hi, hu
b. mi, mu
c. yo, ya

倍数の数は同じ子音字で作られ、母音字だけが異なるだけである。これは 1, 2, 20 でも表れる。

(2)
a. 1, 2, 20
b. hitotu, hutatu, hatati
c. h-t-t, h-t-t, h-t-t-

1の倍数の2も、2の倍数20 も基体は h-t-t の子音字で構成され、倍数ごとに母音字が変化するだけである。このような倍数の法則は数だけでなく、自他交替でも生じる。

(3)
a. 上がる、上げる
b. agaru, ageru
c. a-g-r-, a-g-r-

自動詞と他動詞は項の数から考えると自動詞は主語のみを取る1項述語であり、他動詞は主語と目的語を取る2項動詞であるから項の数からいくと倍数の関係にあると考えられる。自動詞が1で他動詞が2であるからちょうど (1) の関係と同じである。だから (2b) の関係と同じく、同じ子音字の基体を持ち、倍数が変わると母音字が変わるという倍数の法則が成り立つ。英語の自他交替も同じである。

(4)
a. sit, set
b. [sit], [set]
c. s-t-, s-t-

sit は主語のみを取る1項述語であるが set は主語と目的語を取る2項述語である。 (1a) と同じく、倍数の法則が成立している。一見して倍数の法則が成立していないように見える次の自他交替も実は倍数の法則が成立しているのである。

(5)
a. lie, lay
b. [lai], [lei]
c. l-i, l-i

lieは主語のみを取る1項述語で、lay は主語と目的語を取る2項述語である。一見して共通なのは頭字の l だけのように見えるが、つづり字ではなく、発音が問題なのである。自他の交替は (5c) の skeleton が共通なのである。

[PR]
by miyakmae | 2016-05-08 08:55 | 言語

英語の冠詞

やはり英語の冠詞は日本語話者は弱いみたい。 a kind of novel にやはり a kind of a novel と不定冠詞をつけたがる。どうも学校で名詞には不可算名詞と可算名詞に2分されるのであるという説明が脳の奥まで浸透しすぎているせいだと思う。「この名詞は不可算だから a はつかないのではないですか」、とか、「この名詞は可算名詞だから a をつけなくてはいけないのではないでしょうか」、という質問が非常に多い。その都度、可算名詞とか不可算名詞なんていうのはないんだと言っても納得しない。「辞書に書いてあるではないですか」と反論して Genius かなにかを持ってくる。本当にあの辞書は嫌いだ。なにが Genius だ Dumb に名前を変えろ。

(1)
a. There is more desk for two people working on their project.
b. There are more desks for two people working on their project.

deskは a もつくし a なしでも全く問題がなくただ a がつく可能性が高いというだけで desk を可算名詞であるといったら (1a) のような表現ができなくなってしまう。 (1a) も (1b) も両方とも可能なので desk をどのように認識するかどうかで不定冠詞がついたりつかなかったりするだけである。

(2)
a. He wrote a letter in pencil.
b. He held a pencil in his hands.

pencil も a がついたりつかなかったりする。それは pencil をどのようにとらえるかどうかの問題で pencil は可算名詞であるとか不可算名詞であると固定されて決まっているわけではない。基本的にどのような名詞でも a がついたり、a なしで使うことも可能である。

中学校で習う

(3)
a. I went to school.
b. The police officer went to a school.

(3a) をイディオムとして教えるからダメなのである。 school は school で a もつくし、 a なしでも使うということを教えるべきである。われわれは school を homogeneous な構成素から構成されていると捉えるか heterogeneous な構成素から構成されているかどうかで a がつくかつかないかを決めているだけなのである。

[PR]
by miyakmae | 2016-05-08 08:54 | 言語

crossroads

crossroads は two roads がクロスしているから複数形で単数の意味をなす単複同形の sheep みたいな語と同じであるという固定概念があまりにも強すぎる。日本の英語教育のせいなのかもしれない。

crossroads に不定冠詞の a がついていないと2つ以上の intersection を意味すると考えてしまうが、実際は a crossroad と a crossroad の複数であることもあり得る。a crossroad は a crossroads の一方の road のことで a crossroads には two crossroads が cross している。crossroads と数詞がない場合は意味は曖昧で a crossroads と a crossroads の複数形なのか、 a crossroad と a crossroad の複数形なのか曖昧なのである。

つまり複数語尾の -s には単位複数形を表す役割と発展した別の意味を表す機能の2つがあるのである。これは a wood 「森」と woods 「森」の違いと似ているような気がする。複数語尾は単なる複数とそれから発展した拡大意味を表すのに援用されるのである。その発展した意味を用いて frozen 化したのが idioms なのだろうと思う。

つまり単数を表す不定冠詞は「1つの個体」を表すとか複数語尾は「複数の個体」を表すという固定的な考え方が言語のとらえ方を制限して勘違いを引き起こすのである。 a は「個体」を表したり「種」を表したり「特質」を表したりといろいろな意味役割を担っているしゼロ冠詞も「物質」を表したり「属性」を表したり「容積」を表したりいろいろな役割を演じている。また複数語尾も「区域」を表したり「集団」を表したり「報酬」を表したりといろいろな意味を表す。

[PR]
by miyakmae | 2016-05-05 20:43 | 言語 | Comments(0)


言語学と猫のブログ    HP「英語と日本語の窓」は    http://miyak.web.fc2.com


by miyakmae

プロフィールを見る
画像一覧

S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31

カテゴリ

全体
ペット
写真
言語
哲学
日記
PC
未分類

以前の記事

2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 01月
2015年 01月
2014年 01月

フォロー中のブログ

最新のコメント

こんにちは!はじめまして..
by ズーク at 00:00

メモ帳

最新のトラックバック

ライフログ

検索

その他のジャンル

ブログパーツ

最新の記事

朝もや
at 2017-08-23 20:55
明野の向日葵
at 2017-08-17 15:14
明野のヒマワリ
at 2017-08-17 15:14
外置
at 2017-08-17 06:07
非叙実述語と動名詞
at 2017-08-16 12:16

外部リンク

ファン

記事ランキング

ブログジャンル

カメラ
語学

画像一覧