やりもらい動詞
2017年 01月 20日
日本語のやりもらい動詞は人称によって表現が異なるのがなぜかずっと考えてきた。ウチとソトの2つに分けるのは1人称と非1人称との分化なのではないかと考え、どうも人称が日本語という言語に深くかかわっているのであると思う。
(1)
a. ジョンがメアリーに本をあげた。
b. ジョンが私に本をくれた。
(1b) のように「ジョン」という非1人称から「私」という1人称に「本」が移動する場合は「くれる」を使い、(1a) のように「ジョン」という非1人称から「メアリー」という非1人称に「本」が移動する場合には「あげる」を使う。しかし「メアリー」を1人称であるウチの方に取り込むと(メアリーが話者の子供だったり、妻だったりすると) (1a) の本の移動は次のようになる。
(2)
a. ジョンがメアリーに本をくれた。
(2a) では話者がメアリーに対して特別な思いを寄せていることを表し、 (1a) とは異なる。日本語はこのようにいろいろな述語表現で人称がかかわってくるということは、受動態の作り方がこのような人称と深くかかわってくることと関係がありそうに思える。 (1) の文はどれもいわゆる受動態にすると非文となる。
(3)
a. *メアリーはジョンに本をあげられた。
b. *私はジョンに本をくれられた。
受動態は視点を変えた同等な表現であるが、日本語の場合は視点を変えるときには受動態のような形式でなく、動詞そのものを変えて表現するのである。