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場所句倒置

Locative Inversion

英語の場所句倒置は一般に「存在」や「出現」を表す主語の意志とは関係のない現象を表す非対格動詞を使った文が場所句に焦点が移動したときに生じると説明されている。しかし非対格動詞でなく主語の意図的行為を表す非能格動詞でも場所句倒置がなされるので問題は簡単でない。

(1)
a. The boy ran into the room.
b. Into the room ran the boy.

(1b) の run は主語の意志によって control できる非能格動詞であるが場所句が文頭に移動して倒置が可能である。普通は主語の意志によって control 可能な動詞の場合は場所句倒置は起きないのが一般的である。

(2)
a. The man spit on the street.
b. *On the street spit the man.

(2b) が非文になるのは spit が主語の意志によって control される非能格動詞であるからと説明されるが、それでは (1b) と (2b) の文法性の違いが説明できない。これは統語的な分析は動詞のレベルで分析するのではなく、動詞句のレベルで分析しなくては本質が表れてこないからである。場所句倒置は文の中の動詞句がどのような働きをしているかで分析すべきなのである。 (1b) は run の意味ではなく、 run into the room の意味で、これが全体として「出現」や「存在」を表していて、まるで appear とか exist のように非対格動詞のように振る舞っているから (1b) が文法的となるのである。しかし (2b) は spit on the street は [spit [on the street]] とあくまで前置詞句は副詞句のような働きをしていて (1b) のような動詞句を形成していないのである。動詞句は動詞句なのであるが spit と on the street の距離が run と into the room の距離と異なるのである。


by miyakmae | 2015-01-01 00:00 | 言語

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