能格動詞と両用動詞

英語で自動詞と他動詞が同形のものを能格動詞と呼んでいる。意味的には物理的な変化や質的な変化を表す動詞である。
(1)
a. The president changed the society.
b. The society changed.
(1a) が他動詞の例で (1b) が自動詞の例である。自他とも英語では同形の change を使う。しかし日本語ではこのような能格動詞は同形ではなく自他有対動詞と呼ばれ自動詞と他動詞の形態が異なるのが一般的である。
(2)
a. 大統領が社会を変えた。
b. 社会が変わった。
(1a) の changed は日本語では「kae-ta」で (1b) の changed は「kawa-ta」と自動詞と他動詞とでは形態的に異なる。日本語ではこのように自動詞と他動詞が異なった形態で語彙化されているのである。
日本語で自動詞と他動詞が同形のものを両用動詞と呼んでいる。英語と日本語では用語が異なるのである。英語では能格動詞、日本語では両用動詞である。
(3)
a. ドアがひらく。
b. ドアをひらく。
(3a) が自動詞の「開く」で (3b) が他動詞の「開く」である。両方とも形態的に同じである。このような自他両用動詞は非常に数が少なく「開く」の反対の「閉じる」や「増す」や「膝がつく」や「膝をつく」などの「つく」など少ない。ちょうど英語の自動詞と他動詞を形態的に異なった形で表すペアの動詞とよく似ている。英語の能格動詞と異なり、自動詞と他動詞とでは形態素で自他の違いを表すペアがいくつかある。 lie や lay とか sit や seat のペアである。このペアの少なさと日本語の両用動詞の数の少なさとがどうも並行的な気がする。しかしなぜ異なった形でそのような違いが現れるのかいくら考えてもヒントが見つからない。

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Commented by ズーク at 1900-01-01 00:00 x
こんにちは!はじめまして。<br>
何ヶ月も前の記事ですが、コメントさせてもらいます。<br>
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学生のころといっても何年も前ですが、<br>
日本語に於ける非対格(能格的)表現について考えていたことがあります。<br>
<br>
まず、ご指摘の「膝をつく」ですが、<br>
身体の部分をあらわす(いくぶんか慣用的な)表現にはいくらか例がありますね。<br>
<br>
「目をまたたく」「手をたたく」「舌をうつ」とかそんなのです。<br>
<br>
それから、おそらく現代的な新しい表現でいくらかの例があります。<br>
<br>
「会社をかわる」などですね。<br>
<br>
そして、実は、漢語を考えると結構見落としていた例があるのではないかと思います。<br>
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「イルミネーションを点灯する」<br>
「画面を表示する」<br>
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思えば、漢語動詞は「する/させる」という形態変化はありますが、和語と比較して自動詞と他動詞が対になるような音素的変化に乏しいですので(英語などのように)自他同型で使用される語彙が形成しやすいのかも知れません。<br>
<br>
本居宣長以来の伝統的な領域ですし、言語学的な本質に近い議論だとは思うのですが、なかなかまとめるのは難しいのですよね。ご参考になれば。

by miyakmae | 2016-01-01 00:00 | 言語 | Comments(1)

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