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主題役付与均一性仮説

UTAHはアメリカのモルモン教徒の多いユタ州の意味ではなく、言語学では意味役割と統語構造との関係を表す仮説の一つである、「θ役付与一様性の仮説」とか「主題役付与一様性仮説」と呼ばれるもので Baker (1988)が提案した一般仮説である。もともとは関係文法の Perlmutter and Postal (1984) の UAH (Universal Alignment Hypothesis) 「普遍的配列仮説」に依拠してそれを発達させた仮説で、項にみられる同一の意味役割(主題関係)は D構造で同一の構造関係により表示されるというものである。たとえば

(1)
a. The ice cream melted into mush.
b. Tom melted the ice cream into mush.

(1a) や (1b) の the ice cream は主題である。同じ主題であるなら D構造においては (1a) も (1b) も同じ統語構造であったとする仮説である。 (1a) の the ice はもともと (1b) の the ice cream と同じように目的語の位置にあったとするのである。といのは into mush という結果を表わす叙述は目的語が存在しなくては成り立たないのであるが (1a) は表面的には目的語がないにも関わらず into mush が the ice cream の結果を表わすことができるので (1a) は D構造では (1b) と同じく、

(2)
a. [Φ [melted the ice cream into mush]]
b. [The ice cream melted t into mush]]

(2a) の構造をしていたのが主語がないために (2b) のように主語位置に移動してきたと考えるのである。同じ意味役割をもつものは D構造では同じ統語構造を持っているという強力な仮説なのである。しかし心理動詞の分析などいろいろと問題を抱える考え方でもある。


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by miyakmae | 2016-01-01 00:00 | 言語

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